講座にご参加くださったAさんから、このようなご相談をいただきました。
(ご本人の許可を得て掲載しています。)
幼稚園選びで、夫と意見が合いません。
私がいいなあと思っている園は、
・自由保育を実践
・ワークや体操時間などの一斉教育は廃止
方針です。
夫は、
と言っています。
私も、自由すぎて、不安になるところもあるので、
夫に主張できないんです。
今のところ、
この園を選んでも、選ばなくても後悔しそうで、
モヤモヤと悩んでいるところです。
(プライバシーに配慮して、一部、文章を加工しました)
私は、教育に携わる者としても、1人の母親としても、
【のびのび自主性を尊重したい派】
とお断りした上で、お返事しました。
目次
1.今の教育現場が目指している能力
私たちの頃は(…と言っていいのかな笑)、
答えが合っていればOKでした。
今は、答えが正解ならいいわけではなく、
どうして、その答えになるか、
「過程」「考え方」を仲間と話し合います。
そこで伸ばす能力は、
- 人に説明することで、より学びを深める。(うまく説明できない時は、理解も浅い)
- 分かりやすく説明するプレゼンテーション力をつける。
- 自分とは異なる意見を聴くことで、考えがより深くなる。
- 他の人と考えることで、1人では出しえないアイデアを出す。
などなどがあります。
「日本人はプレゼンテーション力が低い。」なんて意見もあるくらいですしね。
この学び方は、
自分が答えだけ出せばいいのではなく、
他人との関わりで学んでいくので、
【他人との高いコミュニケーション力】が必要。
自分の意見を押し付けたり
相手の意見を聴かなかったり
ではうまくいきませんよね。
そして、このスタイルは、「自主的」「主体的」に
課題に取り組む姿勢がないと機能しづらいです。
今の授業は、小学生からこのスタイルです。
大学から始まったアクティブラーニングというスタイルを
今は、小学生から取っているんです。
(学習指導要領には、「主体的・対話的で深い学び」と載っています。
ご興味ある方は、これらのキーワードで検索すると、色々出てきます。)
幼稚園はその前段階ですよね。
その観点で、幼稚園を考えてみます。
2.幼稚園で自主性は早いか?
その年齢なり、その子なりの「自主性」は、小さい頃からあるから、
お子さん(3歳)は既に「自主性」を発揮していると思います。
例えば、
・あのズボンじゃなきゃ嫌だ!
→僕は、あのズボンを履きたいという自主性
・ボタンはボクがはめる!
→自分でボタンをはめたいという自主性
・ボクも掃除機かけたい
→お手伝いしたい、お母さんが使っているものを使ってみたいという自主性
などなど。
大人の視点で見ると、
・あのズボン、上と合わせると色がちぐはぐなのよね(^_^;)
・ボタン、自分で結局はめられなくて、癇癪おこすじゃない・・・。
・手伝うって言ったって、かえって時間がかかって大変なのよ。
と思えて、
自主性とは、とらえにくいけれど、
人に言われなくても自ら自分でやりたい気持ちだから、
どれも、自主性と言えると思います。
・すすんでお片付けをする。
・言われなくても歯磨きをする。
・自ら勉強する
など、
大人の都合のいい言動をすることが、
自主性ではありません。
「自分でやりたい気持ち」を伸ばすのは、
むしろ、今がいいチャンスではないでしょうか。
自主性の“芽”を育む時期というか。
それが大きくなったときに、
・自分でやってみようという好奇心
・やる気
につながると思います。
好奇心ややる気は、「出しなさい!」と先生や親に言われても、
出せるものではない。。。
湧いてくるものだから。。。
参考までに、こんなサイトもあります。
https://www.mamatenna.jp/article/40259/
3.のびのび遊ばせるだけなら、家でもできるか?
まあ、答えは「YES」かもしれませんが(笑)、2点検討してみましょうね~。
①お母さんの役割
平日にこの役割をメインで担うのは、
Aさん(お母さん)ですよね。
それは得意ですか?
私の場合、上の子はとてもアクティブ。
小さいころから、子供の運動能力に全くついていけなくて。
また、栃木に引っ越してきたばかりのタイミングでの園選びでした。
降園後に、一緒に遊ぶお友達を私が作れるかどうかも
イメージが湧かなくて。
だから、園の活動は、思いきり遊ぶ役割を担ってほしかったです。
1人っ子だったので、園で同世代のお友達と自由に
たくさん遊ぶことを通して、
子供同士のコミュニケーションも
学んでほしかったですね。
優しい子、ちょっと意地悪する子、強い子、泣き虫さん・・・
色々な子と、試行錯誤のやり取りを通して。
②遊びの重要性
遊びは【学び】。
自由時間に見える【勉強】ととらえます。
例えば、一緒にお散歩して、
「あ、タンポポにミツバチが!ハチは、ああやって蜜を取るんだよ。
その時に、花の、この黄色いものが足に付くでしょ。
これは花粉て言うの。他の花の蜜を吸いに行ったときには、
花粉がついて・・・」と話すなど、
それも【勉強】なんです。
机に向かって、先生の話を聴いたり、
ワークシートの問題を解くことだけが勉強ではありません。
園児の【勉強】は、お散歩や遊びを通してする。
それならば、1日何時間もお勉強できます。
改めて、【遊び】から【学ぶ】例を少し見てみましょうね!
鬼ごっこ
・ルールを学ぶ(コミュニケーション、社会性、協調性)
・走る力をつける
・考える力をつける(どういうルートなら逃げられるか、捕まえられるか)
積み木
・数学的思考力をつける「△と△を合わせたら、□になるんだ」など
・片づける時、どうしまえば、蓋が閉まるか考えるのも、数学的思考力につながる
手遊びしながら歌を歌う
・指を動かすことで、脳の発達を促す
・リズム感や反射機能が身につく
どれも教育効果抜群!
同じように遊んでいても、
【学び】と捉えるか、
【自由にただダラダラ遊んでいるだけ】と捉えるかで、
親の声かけや関わり方も、全然違ってくると思います。
幼児の遊びは、全て、将来の勉強の基礎力。
耳にタコですが(笑)、
遊びの時間は、他の子供とコミュニケーションを取る
絶好の機会でもあります。
小さいうちは、言葉が足りなくて、手が出たりしても、
それも【学び】の過程ですよね。
私はそのように、【遊び】は【学び】ととらえています。
子どもが幼稚園の頃、
「○○くんのお仕事はいっぱい遊ぶことだよ」と言っていました。
4.体操を指導の下で学ぶ VS 遊びで学ぶ
お話に出た「体操」を例に、もう少し考えてみます。
走り方 | 集団行動(笛に合わせて並ぶ) | 待ち時間 | |
指導 | 腕の角度など教えてもらえる | 得意 | 長い |
遊び | 自己流が身につくこともある | 難しいこともある | 短い |
(表は、比較のために単純化したので、一概にこうは言えません)
どちらもメリット、デメリットがあります。
ちょっと気になったのは、待ち時間。
体操を指導の下で学ぶ場合、他の子がしている間の
待ち時間が長くなり、
実質的に体を動かす時間は短いことも。
そういう論文を読んだこともありますし、
「運動が苦手で、体操を習いに行った。でも、
ほとんど見ている時間だから、上達しない。」
とお聞きしたこともあります。
運動を得意にしたい時、
鬼ごっこをして走り回ったり、
命の危険や人の迷惑でない限り、「あれダメ。これダメ」
と言わず、子供がしたいことを見守って、
手伝えるところは手伝うっていう方法もあります。
(手の届かない鉄棒に、ぶら下がるときに抱っこしてあげるなど)。
遊ぶついでに、
ちょっとした角度のコツなど親が教えられるならば、
それがもっといいかもしれませんね。
(私は運動がダメで、その役割はもっぱら夫でした)
5.幼稚園を選ぶ時のポイント
ここまでを踏まえて、選び方のポイントをまとめてみます。
①お子さんの性格や得意なこと
どこを選ぶにしても、
お子さんに合ったところ
お子さんの力・可能性を伸ばせそうなところ
がベストですよね!
お子さんはどんな感じに見えますか?
負けず嫌いとか、運動が得意かとか、のんびりとか、リーダー的存在とか・・・。
例えば、うちの下の子は、のんびり屋さん。
マイペースでおっとりしていて、
親の目から見ても、他の子に比べると
「あちゃー。できないなー。」って感じです(笑)。
アドラー心理学などを知らなかったら、他の子と
”できない子ちゃん”の下の子を比べて、私は焦っていたかも。
子供の可能性を疑うわけではないけれど、
万が一、「ほら。〇〇ちゃんのようにガンバレ!」など、
人との比較を強調するような環境の園に入ったら、
ごく小さいうちから、自分を”劣等生”と感じる可能性も。
どんな子にも、良いところが必ずあります。
だから、運動が苦手でもいいと思うけれど、
私がいやなのは、他の子と比べすぎることで、
「私はできない子」と自信を失うこと。
「それならやーめた」とやる気を失うことです。
それで、保育園は、のびのびして、温かい雰囲気、
アットホームなところを選びました。
お子さんの性格や得意なことを
よく観察するのも、ポイントの1つだと思います。
②園だけに任せ過ぎない。
どちらの園に行くにしても、
園で子供の教育の全てを任ってもらう
と考えなければ、良いのかなと思います。
どんなに素晴らしい幼稚園でも、全てを園で
カバーすることなどできません。
私たち親も、関わろう、補えるって思えば、
「園選びに失敗したらどうしよう」という
不安が減ると思います。
例えば、体操を教えてくれる園に入っても、
そこだけに任せっぱなしで、
親が外で遊ばせる機会がゼロだと、
運動能力が高くならないこともあるというふうに。
もし、ご主人のおススメするしっかり教育系の園に入ったら、
園以外では、子供の自主性を伸ばすような関わり方をする。
例えば、降園後も習い事でいっぱいにするよりは、
など。
もし、Aさんのおススメするのびのび系の園に入ったら、
例えば、体操教室で集団行動を学ぶとかでもいいのかもしれないし、
別に習い事をしなくても、お休みの日に、
などでも、社会性は大いに学べますよね。
親の関わり方次第ですかね。
(と簡単に言っちゃってますが・・・笑)
6.幼稚園を選ぶときに一番重要なこと
いずれにしても、お子さんが長時間過ごす
大切な園を決めるわけだから、あっさり
決められないこともありますよね。
でも、Aさんは、以前のようにケンカをするのではなく、
冷静にご主人と話し合っているんですね❤
私は、のびのび系の園が好きだけれど、
規律あるところで勉強させたいという
ご主人の考えを否定するつもりもないし、
お2人がよく話し合って決めた園ならば、
それがベストな園だと思います。
一番重要なのは、
お父さんとお母さんの意見が違っても、
ちゃんと話し合って仲良くいられる
安定した家庭環境であること。
仮に、一時的に不穏な空気が流れてもネ(笑)。
長くなりましたが、何かの参考になりましたら、幸いです。
素敵な園を選ぶことができますように!
しばらくして、Aさんからこんな嬉しいご報告をいただきました。
(こちらも、プライバシーを考慮して一部加工しました)
優子さんからのお返事、何度も何度も読み返しました。
何かの参考どころか、
一つの講座を受けたのかと思うくらいの内容で…
本当にありがたかったです!
教育者として、2人のお子さんのお母さんとしての
アドバイスには、気付くことばかりでした。
おかげで
ずっと悩んでいた園選びの迷いが晴れました。
子供の自主性について・・・
夫も私も、少し勘違いをしていたようです。
まさに大人の視点で見て、
都合よく動ける子になってほしい
と思っていたところがあります。
幼児期は【遊び】が【学び】…本当にその通りです。
周囲のママさんたちの教育熱心さに圧倒され、
遊び主流の幼稚園では、いまどきついていけないのかな?
と不安になっていました。
遊ぶことの重要性を十分に理解していれば、
「何も身につかない・・・」と、
焦る必要はないんですよね。
しっかり教育系の園に通わせたり、習い事をさせたりすれば、
「○○できるようになる」と、単純に考えることもできなくて。
園に全てを任せっぱなしにせず、
子どもを伸ばすかどうかは、
親の関わり方次第なんですね。
私は、幼児期には、たくさんの遊びの中で、
肉体的にも精神的にも生きる力の基礎を培ってほしいので、
のびのび系の幼稚園に入園を決めました!
(中略)
夫も納得して、
夫婦同じ方向を見て、
子育てしていけそうです。
習い事やワークにはこだわっていて、
足りないものは俺がフォローすると
意気込んでいますが・・・
まあそれはそれで、
やってくれるならありがたいです。
(長い子育てには、誰だって紆余曲折ある。
2人で話し合って同じ方向を向いていれば、
ぶれることがあっても、
ちゃーんと軌道修正していける!
という私の話に関して)
これは、アドラー心理学を知るまでは、私にない発想でした。
一度否定されたら、全て「ゼロ」になってしまい、
絶望的な気分になっていました。
そうではなくて、
相手の意見にも耳を傾けて、
すりあわせしていけば、
解決できることもあるんですね。
今まで夫とどうしてこれができなかったんだろう・・・。
講座で学んだことが、本当に今回の件では生かされました!
感謝です!!
素敵な園を選べたと、大満足しています(^_-)-☆
Aさん、こちらこそありがとうございました。
大満足の園を選べたというご報告、私も嬉しかったです。
そして、今回、
「同じように悩むお母さん達のためになるなら。」
ということで、掲載を許可してくださったことに
心より感謝申し上げます。
長文をお読みくださり、ありがとうございました!
***
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